最終篇 AQUAMARINE
著者:shauna


 1ヶ月後・・・


 フェナルトの病院にて、サーラはアリエスの胸から静かに聴診器を離した。

 あの後、すぐのことである。

 サーラとファルカスの待つ宿に戻ってきた途端にシルフィリアとアリエスは笑顔のまま・・・床に倒れこんだのだ。

 そもそもアリエスは栄養失調と脱水症状と寒い所に長らく拘束されていたことによる風邪とそれに伴う肺炎でボロボロの状態だったし、シルフィリアは誘拐されたアリエスが心配でロクに食事も摂らず(本人曰く、ここ二週間で食べた物と言えば、サーラと共に食べたお粥ぐらいだったらしい。)、さらに必死に情報を集めていたことによる過度の睡眠不足。おまけに魔法で強化した体を無理に行使し、魔力をスッカラカンになるまで使い果たし、その上で法廷に殴り込みに行き、あれだけの取引をしてきたのだ。

 あの日の状態はサーラ曰く、立っているどころか生きているのすら不思議だったらしい。
 ともかく、そこから約2週間は記憶が無い。サーラによるとずっと昏睡状態だったらしい。

 そして、さらに二週間。正直、地獄はこっちだった。

 「まったく・・・あなたもシルフィリアさんも命をなんだと思ってるの?代わりの効かないものすごく大事な物だって分かってる?」

 まあ、こんな感じで・・・

 一日3回の往診の度にサーラの口から命の説法をされ、正直精神が病みそうだった。

 「じゃあ、私・・・シルフィリアさんの方、診てくるから・・・絶対安静だよ。いいね。」
 「イエッサ〜・・・」
 「ムゥ・・・信用できないな〜・・・まあ、いつも通りファルカス置いてくから・・・もし、逃げだそうとすればすぐわかるからね・・・。」
 
 そう言い残し、サーラは静かに病室を出ていく。そして、それと入れ替わるようにしてファルカスが静かに室内に入り、ドアをそっと閉めた。

 「気分はどうだ?剣聖さん。」

 たった二週間とはいえ、毎日のようにサーラは彼を監視役として付けた為、かなり親密になった友人ファルカスは苦笑いしながら言う。

 「頭がおかしくなりそうだよ・・・」

 アリエスも苦笑いしながらそう応えた。

 「毎日毎日、命がどうだとか、身体は資本だとか・・・まったく・・・これなら教会の神父の神様の話の方がまだ楽だとおもう。」
 「まあ・・・それは・・・」
 「・・・でも・・・いい子だよな・・・。」
 「ああ・・・」

 一人の魔法医を認める笑顔を2人は交わす。

 「君が好きになったのも何となくわかるよ・・・。」

 その一言にファルカスの顔に火が付いた。

 「な!!!俺は別に!!!!」
 「隠すこと無いって・・・。」
 「ってか何で分かるんだよ!!!必死に隠してるつもりなのに・・・あれか?剣聖には人の心を読む特殊能力でもあるのか?」

 果たして、あれで隠しているつもりなのだろうか?ってか、そんな、能力があれば、ものすごくありがたいと思う。
 苦笑いするアリエスに今度はファルカスが食ってかかる。

 「ってか、お前こそシルフィリアとはどうなんだよ!!!好きなんだろ!!!?」
 「ああ・・・大好きだよ。」
 「なっ!!」
 
 その一言にファルカスは言葉を失ってしまう。

 「何でそんな恥ずかしいことはっきり言えるんだよ!!!!」
 「だって、好きなんだもん。仕方ないだろ?」
 
 なんかもう男同志とは思えない乙女な会話である。

 「と・・ともかくだ!!!俺はサーラのことなんて好きじゃない!!!それでいいだろ!!!」

 この手の会話をすると、ファルカスは腕組みをしながらいつもこのオチで終わらせる。ってか小学生か・・・。
 まあ、追及してもさらに低レベルな会話が繰り返されるだけなので言及はしないが・・・。

 「まあ、気をつけろよ。サーラを狙ってるのはお前だけじゃない。噂じゃサージルが大分、熱出してるみたいだしな・・・。」

 言い終ってから気が付く。ちょっとこの言い方は意地悪だったかもしれないと・・・でも、まあ・・・事実、サージルがサーラの事狙ってるのは本当だし・・・進言ぐらいはしておこうという軽い気持ちだったのだが・・・。

 事実をしったファルカスは怒るでもなくなんとなく窓の外を見ていた。

 少し傷ついたのかもしれない。


 「悪い。無神経だった。」


 アリエスが謝ると・・・

 「あ・・・いや・・・」

 なんだか素っ気ない返事が返ってくる。

 「どうした?考えごとか?」
 「ああ・・・不思議だな〜と思って・・・」
 「不思議?」

 「ああ・・・思えばハクを拾ったことからだった。あいつを飼うか飼わないかでサーラと喧嘩してたまたま立ち寄ったこの街で、事件に巻き込まれて・・・魔道学会を始めて近くに感じて・・・ロビンと会って、聖蒼貴族を味方につけて、シルフィリアと会って、サージルとバカ(ルシファード)に会って・・・お前に会って・・・気が付けば世界征服を企む悪と対峙して、伝説の聖剣相手に大太刀振る舞い・・・それがたった1週間の内に起きた。今考えると、信じられないな・・・。」

 「ファルカス・・・」
 「なあ、こういうのも運命っていうのかな?」
 
 「・・・気持ち悪いことを言うな・・・」
 「まったくだ・・・。・・・なあ、アリエス。お前達が住んでるのって確か、聖スペリオル王国の領土内だったよな。」

 ファルカスのいきなりの話の転換にアリエスは「あぁ・・・」と頷く。

 「ちょっと頼みごとがあるんだけど、良いか?」
 「・・・変なコトじゃなきゃな。」
 「俺の知り合いで“アスロック・ウル・アトール”ってのが居るんだけど、2年前に聖スペリオル王国に旅立ったんだが・・・もし、あいつがお前らの屋敷の近くに来て『泊めてくれ』って言ったら、泊めてやってくれないか?」

 は?

 「2年前ならとっくにもうスペリオル宮に居るだろう?わざわざなんでそんなことを?それに、俺達の屋敷はかなり山奥だぞ?」
 「いや・・・あいつは重度の方向音痴だから絶対まだフロート公国内をウロウロしてるはずだ。それに山奥なら丁度いい。あいつなら絶対行く。そして絶対に『泊めてくれ』って深夜だろうが構わずに言う。空気も読まずに。」
 「まあ・・・わかった。アスロックだな。」
 「ああ・・・よろしく頼む。」

 それからファルカスは大きく伸びをして頭の後ろに両手を持って行き・・・

 「でも、悔しいよな〜・・・・」

 と呟く。

 「何がだ?」

 アリエスがそう問うと・・・

 「だってさ・・・この街の奴らは俺達がこの街を救ったって知らないわけだろ?何かそれって納得いかないんだよな〜・・・。なんつ〜か・・・頑張り損?」
 
 その言葉にアリエスがクスクスと笑う。

 「んだよ・・・。」
 「ファルカス・・・君は勘違いしてるよ・・・。」
 「?・・・何をだ?」
 「政治家にも言えることだけど・・・世界を救うような法案を可決させた官僚のことを君は知ってる?」
 「・・・いや・・・知らないな・・・。」
 「そんなもんなんだよ・・・。」
 「どんなもんだよ?」


 「真の英雄とは・・・誰からもその名を知られず、一流の功績を残す奴のことを言うんだ。」

 
 「・・・・・・なるほど・・・そうかもしれないな・・・。」

 それはそうと・・・
 
 「でも、まだ一つだけ分からないことがあるんだよな〜・・・」
 「何だ?・・・」
 「サーラの目的さ・・・聖杯が欲しいって言ってたけど・・・何の為なんだろうな・・・」
 「さあ・・・シルフィーは何か知ってるみたいだったけど・・・。でもきっと教えてくれないだろうな・・・」
 「何でだ?」
 「乙女の秘密・・・だそうだ・・・。」
 「ほぅ・・・。」





 一方の別室で・・・

 「・・・・・・」
 「・・・・・・」

 サーラとシルフィリアはものすごく気まずい時間を過ごしていた。というよりも、2人とも顔を真っ赤にして動けない状態といった方がいいのかもしれない。
 
 なぜなら・・・・

 アリエスとファルカスが大声で話している部屋。その隣がシルフィリアの病室なのだから・・・サーラがドアを少し開けておいたせいか、もしくはこの病院自体がそういう欠陥構造なのかは定かではないが・・・ともかく・・・
 隣の部屋から聞こえてくる小学生並の会話は2人に筒抜けなのだ。

 「・・・どうしよう・・・。」

 サーラが俯きながら言う。

 「嬉しくって顔が戻らない・・・。」
 「き・・奇遇ですね・・・私もです。」

 ・・・・・・

 この場で唯一、呑気寝息を立てられるのはシルフィリアのベッドの枕元で身を丸めるハクだけという緊張感・・・。

 微妙な沈黙が続き、少しでも気を紛らわせるためにサーラが林檎をシャリシャリ剥き始める。

 「ねえ、シルフィリアさん・・・」
 「何ですか?」

 「私の願い・・・やっぱバレてる?」

 願い・・・先程ファルカスとの会話の中に出ていたアレのことだろう。

 「ええ・・・知ってますよ。あなたの願い事も・・・そしてそれが無理なことも・・・。」
 「・・・・・・」

 「あなたの願いは・・・”聖杯の力で父と母を生き返らせること“・・・でしょう・・・。」

 「・・・・・・」

 「でも、それは最初から無理な話です。そして、あなたもなんとなく気が付いていたのでしょう?どんなに頑張っても・・・どんなに大きな力を使おうとも・・・一度死んでしまった人間は生き返らない・・・。」

 「・・・わかってはいるんだけど・・・やっぱ無理だよね・・・。」
 「聖杯は便利な魔法のランプではありませんからね・・・。注いだ魔力を数億倍にして零す。列記としたスペリオルなんですよ。」

 「・・・・・・うん。」

 「魔法医のあなたなら分かっておいででしょう?」

 「うん・・・痛い程に分かってはいるんだけどね・・・。」

 「では・・・何故あのような願いを?」

 「うん・・・あのね・・・その・・・やっぱ納得できないってのが一番なのかな・・・。私が11歳だったあの日・・・私の前からいきなり親は居なくなった。一応、お金も家も残しておいてくれたから、生きていくのに何不自由は無かったんだけど・・・でも、やっぱり寂しくって・・・だから、ヴァルフ君やカレンを弟子にして、家族の真似事なんてしたのかもしれない・・・。でも・・・やっぱりある日いきなり居なくなったから・・・気持ちの整理が付いてないのかも・・・変だよね・・・もうあれから6年も経ってるのに・・・。」


 

 「サーラ様・・・」


 シルフィリアが静かに目を閉じる。

 「疑似的な家族って・・・そんなにいけないことなんでしょうか・・・」

 「え?」

 「例えば、アリエス様・・・彼もフィンハオラン家の養子ですので、あなたの言う擬似的な家族に身を置いています。そして、私も・・・いえ・・・私は・・・」

 グッとシルフィリアが唇をかみしめる。


 「私は・・・親を殺しました。」
 「え・・・」


 驚きにサーラが目を見開く。


 「それだけではありません。妹もです・・・」
 「・・・・・・」

 「・・・そんなうす汚れた手で、私はパンも食べるし、本だって読む。でも・・・それでも、罪悪感に押しつぶされないのはきっと・・・アリエス様が居てくれるからだと思います。人の命は重いです。それこそ潰れるぐらい・・・。でも・・・それでも、そんな重たいのを背負って生きていこうって思えるのは、家族のおかげだと思います。」

 「・・・・・・」

 「失ったものは二度と戻りません。しかし、新しく作り直すことは十分にできると思います。自分の過去を肯定しながら・・・それでも悪くないという生き方ができるなら・・・そして、それを与えてくれるのがあなたの言う疑似的家族だというのなら・・・それは決して悪いことでは無いと思いますよ。」
 「強いね・・・シルフィリアさんは・・・」
 「強い?私がですか?」
 「自分の過去をすべて認める生き方・・・私にはできそうにないや・・・」


 その言葉にシルフィリアがクスクスと笑う。


 「私何かおかしいこと言った?」
 
 ムクれてサーラがそう言い返すと、

 「私よりもサーラ様の方がずっと強いですよ。」

 シルフィリアに笑顔でそう返されてしまった為、ますます訳が分からなくなる。



 「私?どういうこと?」


 何時になく真剣な声でシルフィリアがそんなことを言うモノだから、サーラは硬直してしまった。

 「穢れを知らず、まるで聖人君主の如く振る舞える真っ白なあなたと、泥沼に身を沈め、常に利益と目的の為に手段を厭わない、血にベットリ染まった私・・・。私は、そんなあなたがうらやましいです。誰も傷つけず、しかし全てを守ろうとする・・・そんな・・・私以上の強さを持ったあなたが・・・」

 その言葉にサーラも言い返せなくなってしまった。
 ってか、面等向かってそんなことを言われると正直照れる。

 「私は・・・そんなサーラ様のことが・・・」
 「あ!!!!あのさ!!!!」
 
 これ以上言われると恥ずかしくて、溶けてしまいそうなので、慌てて話題を逸らす。

 「ずっと思ってたんだけど・・・その“サーラ様”っての・・・なんとかなんない?」
 
 その言葉にシルフィリアは目つきをキョトンとさせる。

 「なんていうか・・・同い年で“さん”とか“様”って私はおかしいと思うんだ。だから・・・なんだろ・・・」

 どうしよう。慌てて話題を変えた為、どうしても言葉に詰まる。

 サーラがマゴマゴしているとシルフィリアが笑って・・・


 「残念ながら私は・・・一度も敵対したことのない人物や尊敬している人物に敬称を付けない喋り方は知りませんので・・・。」
 「じゃあ、せめて敬語なんとかならない?なんか畏まっててヤダ。」
 「すみません・・・それも、幼き頃よりの癖ですので・・・。」



 「じゃあ、せめて“さん”にして・・・その代わり、私もあなたのことは“シルちゃん”って呼ぶ。そして・・・いつか・・・呼べるようになったらでいいから、私の事もサーラちゃんって呼んで・・・。」

 サーラの柔らかな声にシルフィリアも柔らかく応える。

 
 「承知しました・・・」

 と・・・

 「それでは、サーラさん・・・一つ先に忠告致します。」

 真新しい呼び名でシルフィリアが笑顔で問いかける。

 「何?シルちゃん。」
 その嬉しさも重なり、ウキウキとした声でサーラが問い返すと・・・


 「聞きたいことはしっかりと聞いておいたほうがいいですよ。」


 笑顔のシルフィリアにサーラの体がビクッと震える。


 「な・・・何のハナシデスカ・・・」
 動揺が隠しきれない。

 だが・・・
 
 「あなたの通心波(テレパシー)同様・・・私の瞳で見たモノ程信頼できる事項は無いんですよ・・・」
 その言葉にサーラは絶句する・・・なるほど・・・聖蒼ノ鏡(ヤタノカガミ)・・・自分と同じく嘘を見破る能力。確かにこれでは言い逃れは出来ない。


 「ねえ・・・この街って・・・今後大丈夫なの?」


 その質問にシルフィリアは首をかしげた。


 「どういうことです?」
 「・・・ごめん。私今から不謹慎なこと言う・・・。オボロが居なくなっちゃったってことは・・それはすなわち、この街の護り神が居なくなったってことでしょ・・・確かに“水の証”は戻ってきたけど・・・でも・・・それを守る者がいないんじゃ・・・また・・・今回見たいなことが起きるかもって・・・」
 「・・・・・・」


 シルフィリアはしばし無言のまま、静かに目を閉じる。

 「そういえば、言ってませんでしたね・・・。」
 「何を・・・?」
 
 サーラが首を傾げる。


 「オボロが消える前・・・彼女・・・私にとある伝言を残したんです。」

 「伝言?」

 シルフィリアが頷いた。

 「『私は満足しています。だから死を迎えるこの瞬間も幸福に包まれています。しかし、ひとつ心残りがあるとするなら、それはこの街のこと・・・ですから、シルフィリア様・・・どうか願いを聞いて下さい。この街に再び厄災をもたらさない為に・・・新しき護り神として・・・”ハク”をその任につけて欲しい・・・』と・・・。」

 その言葉にサーラは唖然とし、シルフィリアのベッドサイドで起きたハクが「くぅ〜ん?」と訳もわからなそうに鳴いた。

 「私は・・・オボロの判断を信じます。ですから・・・新しき護り神は彼女の遺言通り、“ハク”に・・・」

 「・・・大丈夫なの?その子、まだまだ力不足だよ?」

 心配そうなサーラにシルフィリアが笑顔でハクの頭を撫でた。

 「この街の未来がどうなっていくかなど・・・私にも分かりません。私の瞳も未来を見ることはできます。しかし、それは決して確定事項ではありません。未来はその姿をどんどん変えていくのですから・・・そして、私は、未来はどうにでもなれると思います。」
 「過去は変えられなくても・・・未来は変えられるってこと?」
 「ええ・・・そして、それを変えるのは奇跡ではありません。想いの力ですから・・・。」
 「人が平和を願う思い・・・か・・・」
 
 サーラが大きくため息をついた。

 「でも・・・もし、間違ったら・・・また争いになったら・・・・シルちゃんはどうする?」
 「その時は・・・私達聖蒼貴族が立ちあがります。あらゆる業を背負いながらも、強大な力を使役しながら・・・・・・」

 その言葉にサーラも嬉しそうに頷いた。まるでそう言うことを予想していたように・・・

 「うん。今なら分かる。シルちゃんが嘘付いてないことが・・・。」

 あっ・・・通心波(テレパシー)・・・

 「気を抜き過ぎでしょうか・・・」
 「普段はプロテクト掛けてて見れないからね・・・。あっ・・・あと、もう一つ・・・」


 「なんですか?」

 「ロビン君って大丈夫なの?罪には問われないって話は聞いたけど、それでも、空の雪に居た事実は変わらないし・・・立場的に・・・ちょっと心配なんだけど・・・」
 「ああ・・・そのことですか・・・」
 「?・・・どうしたの?」

 シルフィリアが小さく笑ったのを見て、サーラが聞き返した。

 「心配いりませんよ。ロビン様の事は表に出ることはありませんから・・・」
 「どういうこと?」

 「お金の力は偉大だということです。」

 ・・・・・・

 「買収したの!!!?それって犯罪こ・・・」

 「サーラさん。何か勘違いしてませんか?」
 「か・・・勘違い?」
 「私達は聖蒼貴族・・・どんな手を使ってでも目的は達成します。私達は正義の味方ではありません。悪を成して巨悪を討つ組織ですよ。そして、今後はリアが弟子として指導に当たってくれるそうです。今後はしっかりとした指導の元でSランクを目指すそうですよ。己の理想とする魔道士になる為に・・・」

 なんでだろう・・・それを聞いた時、ものすごく複雑な気持ちになった。

 サーラ自身、悪は所詮悪でしかないと思っていたはずなのに・・・。

 今は・・・成さねばならない悪がある気がする。


 だが・・・



 「感情に流されてはなりませんよ。」



 シルフィリアの一言で、サーラはハッと我に帰る。
 
 「あなたは私のように汚れてはいけない・・・私のようになってはいけません・・・」
 それからシルフィリアはニッコリと笑う。

 「己の道を貫きなさい。あなたの思っている正義は決して間違いではありません。むしろ、私達の歪な必要悪こそ矛盾の上に成り立っているのです。先程も言いましたが、あなたは強い・・・もしかしたら、あなたこそ・・・私が求めている者なのかもしれません・・・。」
 「求めている者?・・・どういうこと?」
 「今は申さない方がよろしいでしょう。だた、これだけは言っておきます。“期待してます”よ。」
 「なんだかよくわからないけど・・・わかった。」
 「それは、どっちですか・・・」


 2人はほぼ同時に笑い合った。

 それから先は・・・正直2人とも何を話したかは覚えていなかった。

 言うなれば他愛の無い雑談。
 

 そうそれはまるで・・・


 近くの喫茶店で年相応の女の子同士が話し合っているような・・・
  
 少なくとも、今までの2人の生活環境からは考えられないような柔らかなまどろみの時間だった。
  



 時は僅かに前後し、次の日の昼過ぎとなる。



 サーラは最後の往診の為にシルフィリアの病室を訪れるため、廊下をコツコツと歩く。後ろにはファルカスも同行していた。


 「これで最後か・・・いろいろ会ったけど・・・なんか名残り惜しいよな・・・」

 ファルカスが静かにそう呟いた為、自然とサーラの足が止まった。

 「サーラ?」
 心配そうにファルカスが問いかける。

 これで最後・・・そうすれば、シルフィリアもアリエスも晴れて退院。そう思うと感慨深い物がある。

 自分にとって初めての同い年の親友。心を通わせ会える友達とも・・・



 今日でお別れ・・・



 そう思うと、なんとなく・・・胸から胃にかけてが苦しくなる。
 多分寂しいのだろう・・・なるほど・・・胸が一杯ってこういうことをいうのだろうか・・・

 「サーラ大丈夫か?」

 ファルカスが二度目の呼びかけを行った時・・・

 「うん。」

 サーラは静かに頷いた。

 「大丈夫だよ。だた・・・なんとなく・・・ね。」

 それから大きく伸びをして・・・

 「さあ!!!最後の往診だよ!!!患者さんの退院祝いだもん!!!元気ださなきゃね!!!」

 そう無理に笑顔を作り、シルフィリアの病室のドアをノックする。

 

 「シルちゃ〜ん。荷造りは終わった〜?」


 ・・・


 返事は無かった。


 「寝てるのかもしれないな・・・一応病人だし・・・。」

 ファルカスの言葉にサーラも首肯する。
 
 「シルちゃ〜ん・・・」

 もう一度ノックするもやっぱり返事はない。

 「随分と深く寝てるみたいだな。・・・疲れてるのか・・・?」

 ファルカスが怪訝そうにそう呟くと・・・


 

 「まさか!!!!」



 「お・・・おい・・・」


 そんな・・・まさか・・・そんなこと!!!

 自分の勘が外れていることを祈りつつ、サーラはドアノブに手をかけ・・・

 戸惑うファルカスをよそに、サーラが慌ててドアを勢いよく開けた。


 ―!!!―



 勘は当たってしまった。そこにはサーラの思い描いていたのとまったく同じ光景が広がっていたのだ。


 それは・・・











 開け放たれた窓に揺れるレースのカーテン。










 綺麗に磨き上げられた床。









 メイクが既に終了しているベッド。

 








 そして、私物の一切無い部屋。











 そう・・・それはつまり・・・




 「あいつら!!!何にも云わずに出ていきやがった!!!」

 ファルカスが呆れた様な驚いたような口調でそう話す。

 「そんな・・・挨拶もせずに・・・」

 サーラは静かに失望する。


 そんな・・・昨日まであれだけ仲が良かったのに・・・どうして・・・


 「追いかけよう!!!」
 ファルカスが大声でそう叫ぶ。


 「あいつら!!!多分、港だ!!!シンクラヴィアに頼んでゴンドラを出して貰おう!!!」

 「で・・・でも・・・」

 「いくぞ!!!後悔したくないだろう!!!このまま別れるなんて・・・絶対に俺は認めないからな!!!」
 
 いてもたっても居られず走り出そうとするファルカス。その袖をサーラが掴み引き留めた。

 「なんだよ!!!」
 驚くファルカスにサーラは首を振る。


 「いいよ・・・金輪際の分かれってわけでも無いし・・・それに・・・」
 静かに自分の手首を見せる。

 そこには今までしていなかったはずの金色のブレスレットが光っていた。

 「なんだよそれ・・・。」

 「メルディン。使わない時は待機形態としてブレスレットになるんだって。」
 
 「いや・・・そうじゃなくって・・・なんで持ってるんだよ。」
 「シルちゃんがね・・・。『ユーザー登録とパスワード設定を勝手に行った為、もうその杖はあなた以外の誰にも扱えません。』って言って・・・その・・・貰っちゃった。後、今回の手伝い料として、かなりのお金もね・・・。だから・・・なんて言うのかな・・・」
  
 サーラが一瞬言葉を渋る。

 「なんかこれがある限り・・・シルちゃん達と私達は繋がってる気がするんだ・・・だから・・・その・・・『まあいっか』・・・って・・・思って・・・」
 「サーラ・・・」


 そう言ったまま、サーラは俯いてしまう。確かに思い出は残る・・・彼女たちとの間に培われた絆が消えることもないだろう・・・

 だが・・・

 サーラの表情を見る限り、100%納得しているとは思えなかった。


 ・・・・・・


 「やっぱ追いかけよう。」
 
 ファルカスの提案にサーラが顔を上げる。

 「確かにあいつらとの繋がりは消えないけど・・・それとこれとは話が別だ!!」

 ファルカスの言葉にサーラは一瞬唖然としたが、すぐに・・・

 「そうだね・・・行こう!!!」

 そう言ってファルカスより先に走り出した。




 リュシオンシティ郊外の街“ホートタウン”に帰る為にはいくつかの手段があるが、一番早く帰るなら、ルートは決まっている。
 ゴンドラで陸に上がり、そこから馬車で戻るルートだ。



 フェナルトシティはラグーナの上に建てられているため、まずはフロートシティ本土へと渡る必要がある。



 確かに船を使うルートも存在するが、一番早くとなると、ゴンドラで間違いはない。

 だからこそ、サーラとファルカスは慌ててシンクラヴィアを捕まえて、レストランを一時的に店員に任せる形で船を出してもらったのだ。
 


 「シンクラヴィアさん急いでくれ!!速くしないとあの2人が出発する!!」


 慌てるファルカスにシンクラヴィアが優しく諭す。

 「落ち着いて・・・ゴンドラには制限速度があるの。そして、私は今その最高速度で走っている。そして、この最高速度を見極められるゴンドリエーレは私を含めて数人しかいないから、普通なら追い付くはずよ。」


 そうは言われても・・・

 焦るファルカスがなんだか子供みたいで、サーラの口元にも自然と笑みが零れた。

 「ともかく落ち着かなきゃ・・・周りの景色でも見てるといいかも・・・。この街はフロートの真珠とも言われてるぐらいだから、心が休まる情景がいっぱいだしね・・・。」


 シンクラヴィアにそう言われ、ファルカスは自然に目線を街に移す。

 確かに美しい。

 それはこの町に来た時と同じ感想だった。

 高い時計塔・・・町に広がる運河とそれに伴う水の香り・・・


 水上には船がまるで祭りの出店の如くさまざまな物を売り、カーニバルが終わった今でも大陸中からの観光客でごった返す。


 街は何事もなかったかのように賑わい、出店が立ち並んでいた。



 そう・・・世界は知らないのだ。




 この街がどんな状況にあって、誰がそれを解決したのかを・・・



 そんな状況にファルカスはふと病室でアリエスが言っていた言葉を思い出す。




 「誰にも知られることの無い者こそ・・・真の英雄・・・か・・・。」



 「どうしたのファル?」



 おどけたように聞くサーラにファルカスは「いや・・・なんでも・・・」と答える。



 「それにしても人が多いね・・・。こんな中で、シルちゃん見つけられるかな・・・?」



 サーラが思わずそんな弱音を吐く。


 確かにこの人混みの中で特定の2人を見つけるのは難しい・・・

 少し遠くの橋を見つめてみると、そこには僅か数秒でかなりの人数が行き来していた。小さな子供が4人・・・太った婦人が一人・・・それに仲の良さそうな老夫婦に・・・










 白い髪の毛の女性・・・





 あれ・・・


 思わずファルカスが立ち上がり、シンクラヴィアが慌ててゴンドラのバランスを取る。

 「ちょっとファルカスくん!!!いきなり立ち上がったらあぶな・・・」

 「シンクラヴィア!!!すぐにあの橋のところの桟橋につけてくれないか!!?」
 
 「あ・・・うん。」


 ファルカスの言いつけ通りにシンクラヴィアがボートを止めると、ファルカスは慌てて船を降り、橋へと降り立つ。

 
 そこはこの街でも最も有名なリアルト橋の上で・・・

 ファルカスの心臓が高鳴った。

 橋の向こう側から・・・シルフィリアがゆっくりと・・・一人で歩みを進めてきたのだ。

 間違いない・・・服装、髪、顔・・・どこからどう見てもシルフィリアだった。



 「シルフィリア!!!」




 ファルカスが思わず声をかける。するとシルフィリアは静かに立ち止まり・・・

 黙って微笑んだ。

 「ったく!!いきなり居なくなるなんてひどいぞ!!!こっちはお前に言わなきゃならないことが山ほどあるんだからな!!!」

 腕組みしながらそう言ってやるとシルフィリアは静かにこっちに近づいてきて・・・

 「大体だな・・・」

 説教をするファルカスの言葉を遮って綺麗な封筒を一つファルカスに渡した。

 

 「・・・読めってか?」


 シルフィリアが黙って頷く。



 「ったく・・・。」



 めんどくさそうに封を破って中を見ると・・・



 まず一枚目はこんな内容だった。



「カノンシティ魔道学会支部ブライツ=デラード殿
 拝啓 緑がますます濃くなるこの季節、貴伝の活躍を心よりお喜び申し上げます。さて、突然の書状ではございますが、私の友人であります“ファルカス=ラック=アトール”及び“サーラ=クリスメント”をご紹介いたします。2人はカノンシティにおいて、どうやら何か成すべきことがあるようです。つきましては、そのことに関しまして、何か困っている際にはお手伝いの程、御協力の程、よろしくお願い申し上げます。
敬具
シルフィリア=アーティカルタ=フェルトマリア」


 それは見紛うことなき紹介状だった。確かにこれがあった方が魔道学会を訪ねる際にはかなり有益だろう。



 「ありがとう・・・。」


 そっけなく礼を言ってすぐに二枚目の便箋に目を移す。


 そして、そこに書かれていたのはたった一文だけだった。




 「あなたにお礼を渡すのを忘れていました。」


 お礼?・・・




 「けっこういろいろ貰ったけど・・・これ以上何か・・・」




 そう言いかけて・・・ファルカスの体が硬直してしまった。


 「ワオッ!!!」



 シンクラヴィアが声を上げる。



 左の頬に手が触れ、サファイアブルーの瞳と仄かに紅い肌の色に気を取られているうちにそれは終わった。


 そっと頬に触れて離れた柔らかな感触は目を閉じていれば何が起こったかはわからなかっただろうが、目を開けていた今、それはハッキリ見えていた。
 

 シルフィリアは体を話すと何も言わずに背を向けて走って去って行く。


 とりあえず、ファルカスは自分の頬を抓ってみた。


 痛い・・・ということはどうやら間違いないらしい・・・。


 え・・・あのシルフィリアが・・・俺の頬に、キ―



 そして、その光景にはゴンドラの上で見ていたサーラも呆然としてしまった。


 え・・・ええ・・・!!!


 今のは・・・シルフィリア・・・え・・・キスって・・・ええ!!!?



 

 だが、そこで、サーラの頭にとある考えが過る。




 そう言えばオボロはシルフィリアに変身できた。ってことは、今のは・・・もしかして・・・





 “ハク”って可能性も・・・



 いや・・・でも、御礼ってシルちゃんの手紙には 書いてあったし・・・

 


 え・・・ええ・・・どっち・・・どっち!!!?



 訳も分からず頭を抱えるサーラと呆然とするファルカス。

 それを見てシンクラヴィアはクスクスと笑っていた。




 「それで、2人はこの後どうするの?」



 少し時間が経ってからそう話しかけると・・・

 「私達、この後、カノンシティに行くの。だから、とりあえず、本土までお願い。」


 サーラのその言葉にシンクラヴィアは「はい。」と笑顔で対応する。



 まあ、最も・・・



 「ファル!!本土に着くまでたっぷりと話を聞かせてもらうからね!!!」
 「な・・・なんのだよ・・・」
 「惚けないで!!今のキスのことに決まってるでしょ!!あと、ついでに私の服一枚一枚脱がせて裸になるところ妄想したことに関してもたっぷり聞かせてもらうから!!!」
 「お前!!!それまだ寝に持ってたのか!!!?」
 「当然でしょ!!!ファルのバカ!!!」



 こちらはしばらくの間笑顔とはいかないようだったが・・・。




 そして、そんな様子を上空からのんびり見ている男が居た。


 スノーボード型の魔法の箒に乗って呆然とアリエスはその様子を見つめる。


 当然、疑問はサーラと同じだ。え・・・今のは・・・シルフィリア?それとも・・・ハク?


 「どうしました?呆然として・・・」


 そんな所へヴァレリーシルヴァンを箒代わりにして飛んできたシルフィリアが合流する。


 「え・・・えっと・・・」

 戸惑いながらもアリエスはシルフィリアに向かってハッキリと問う。


 「さっきのキスって・・・あれ・・・」
 「あれあれ?妬いてくれてるんですか?」
  「バッ!!!そうじゃなくって・・・」

 シルフィリアのクスクスとした笑いにそうじゃないとは取れない焦った声でアリエスが言い返す。


 「ねえ、本当に教えて!!どっち?!」
 「さあ・・・どっちでしょう。」
 「ちょ!!!ねえ、マジで!!!どっち!!!どっち!!?」



 アリエスの必死に言及に一切答えるつもりのないシルフィリアはただただニコニコ笑ってるだけだった。



 「でも・・・まあ、収穫は多かったですよね・・・。」


 とシルフィリアが呟く。



 「収穫?」



 アリエスが聞くと、シルフィリアは袖から一枚の紙を取り出す。



 「何それ・・・」
 「ブリーストのローブの図面・・・」

 !!!

 「ちょ!!!え・・・何時の間に・・・」


 「ちょっと治す機会がありまして・・・その時にサラサラ〜っと・・・」

 「それサーラ知ってるの!!?」
 「メルディンに比べれば安いものでしょう?さて・・・これでやっと完成できそうです。私のローブ・・・”ベストラ”が・・・」


 それに折れたレーヴァテインも改修しなければなりませんしね。とシルフィリアは付け加えた。


 「でも、その前にインフィニットオルガンの調整とか修理とかもあるんでしょ。」
 「そうですね・・・では、聖蒼貴族の方へのレポートはいつも通り、お願いします。」

 それを聞いてアリエスははぁ〜とため息をつく。

 「またしばらく眠れないのかよ・・・。」
 「仕方ありませんね・・・アリエス様が書いて下さらないのなら、仕方ありませんので、私が自分で書きますよ・・・」

 え?


 「マジで・・・?」

 「その変わり、帰ったらベッドの中で、私以外の女性について行った件に関して根掘り葉掘りたっぷり苛め・・・聞かせてもらいますのでそのつもりで・・・」
 「いや・・・俺が書きます。」

 切実。それだけは勘弁して下さい。

 「さて・・・では、私達も帰りましょうか・・・」
 「?・・・シードに?」
 「レウルーラにですよ。」


 その言葉を聞いた途端にシルフィリアのローブのフードからセイミーが「みゃあ!」と嬉しそうに鳴き声を上げた。

 
 「・・・そうだな・・・。」
 
 2人は静かに笑い合い、レウルーラのある西を目指す。



 互いの関係も過去も違うけれど・・・その本質はなんら変わらない。



 少なくともサーラとファルカス・・・そしてシルフィリアとアリエスという2組においては・・・。













 海に風が 朝に太陽が必要なのと同じように 互いのことを信頼し、大切だと思ってくれる人が必ず傍に居る。

 


 森に水が 夜に光が必要なのと同じように それが無くなってしまった後のことなど想像も出来ない。




 互いに敵同士として出会い・・・一時期は命をかけて殺し合った・・・


 しかし、今・・・彼らは彼女らは・・・片や憎しみが渦巻く過去の中で・・・片や争いが絶えない世界の中で・・・


 恐れず、勇気を捨てず・・・信じ合い許し合う心と 愛し合い分かち合う心で



 星(理想)を追いかけ、虹(そこへ通じる道)を駆け抜けた。



 そして・・・その星も虹も決して消えることはなく、今でも輝き続けている。



 なぜなら・・・





 空には月が 花には蝶や蜜蜂が必要なように・・・

 



 互いのことを本当に必要な人が必ず傍に居るのだから・・・






 それはまるで・・・互いを湛える為の曲












 小夜曲(セレナーデ)の如く。














Fin


 Thank you for reading
 
 6月13日 15:32

 総ページ数 778ページ(原稿用紙換算)

 使用ソフト Microsoft office word 2007

 総文字数  230.278


 著者 shauna
 Special thanks Mr, ru-raa

 And you



 あとがき


 というわけで水の都のセレナーデをお送りしました。
 さて、まず注目すべき点は総ページ数・・・
 これなんて終わりのクロニクル?もしくは境界線上のホライゾン?
 しかも、確か予告した時には全20話だったはず・・・なのに、気が付けば長すぎて途中で話数を増やしたり、前篇後篇を作ったりしながらやっていたら・・・
 なんと総文字数22万の大台を見事に超えました。前回の”護りし者たちの交響曲”が14万ぐらいだたはずですから、これはかなり凄いことです。ありえないです。
 うんよく頑張った俺!!!と自分で自分をほめちゃいます。
 いいですよね?脳内では何をしようが問題ありませんから・・・ビバ脳内!!
 
 さて、では裏話でもしましょうか・・・え?そんなの聞きたく無いって?そうおっしゃらずに・・・

 まず、舞台はぶっちゃけベネチアです。だた参考資料がARIAっていう情けない事態に陥っているのは気のせいです。きっと・・・
 
 わ!!私だってもちろん取材しにベネチア行きたいですよ!!!でも仕方ないじゃないですか!!!お金無いんだから!!!

 というわけで、舞台は天野こずえ大先生の美麗なイラストをモチーフにイメージしていますので、本物のベネチアはこんなんじゃない!!なんて言われても・・・連れてって下さいとしか言い返せません。


 次にキャラクター・・・


 基本的に私のキャラには実際のモデルが存在するわけですが、例を上げるとするなら、

 リア・ド・ボーモン → 実在の人物“デオン・ド・ボーモン”+“セイバー”+“秀吉”
 ロビン → “ハリーポッター” + “闘う司書より「マットアラスト」”
 オボロとハク → 可愛い妹キャラ + にゃんこ先生

 みたいな感じで・・・

 もちろん、シルフィーやアリエスにもモデルは居るわけですが、言うのが恥ずかしいので言いません。

 さてさて・・・今回のお話はファルカスとサーラの恋人性と絆の深さについて・・・みたいなところがあります。何しろサーラちゃんは自分の親を殺した相手を許すほどの聖人君主ですので、魔王シルフィリアとはまったく対極に位置する人物なんですよね・・・

 そんな2人を掛け合わせつつ、恋心を発展させつつ、時代的に後の話になる護りし者たちへの伏線を立てるというなんともやること一杯なテーマでお送りしたわけですが・・・書いてて分かりました。サーラとファルカスはもう恋人です。信頼の絆が違います。

 いつか結婚式の話読むのが楽しみになってきました。

 ちなみに本編が頃合いになったらシルフィーとアリエスの結婚式とか子供とか出したいと思います。もちろん、子供を作る過程はルーラー様にぶっ飛ばされるのでやりませんが・・・。

 それと、基本私の話は予想正解率10%未満を目標に頑張っているわけですが、どうだったでしょうか・・・シルフィーの目的やシュピアの正体、シルフィーVSシュピアの結末やリアの正体など、気が付かないでいていただいて、いざ分かった時に「あッ!!」と驚いていただいたらシメたものです。

 まあ、シルフィーの強さがさらに拍車がかかっているので、わかるかチクショウと言われればゴメンナサイと謝るしかないわけですが・・・。

 では、最後にレオン・ド・クラウンの説明でも・・・

 モデルはもちろん円卓の騎士です。全部で13人が存在し、シード宮殿内には円卓を囲って13人が座れるようになっているわけですが・・・

 とある事情故に現在は8人しか存在しません。

 というのも、先程記述した円卓の席なんですが・・・これは聖蒼貴族が創始時に時の三大賢者に注文して全ての席に呪いをかけて貰ったのです。そしてその呪いというのは「新しいメンバーの候補生が総合的に判断して前騎士よりも弱かった場合、席に座れない」というモノです。ちなみに座れないというのは、座ろうとするといきなり気分が悪くなったり、座る前に怪我をしてしばらく入院することになったりなどということ・・・決して椅子が弾き飛ばすとかいうファンキーなことではありません。また、NoTは前席が強過ぎたため永久欠番、]Vの席はユダの席とされているため、厄除けに存在しているに過ぎず、座ったら大いなる災いが降りかかるとされているため、永久空席となっています。

 というわけで現在のメンバーを紹介します。

 1、アーサー=ペンドラゴン(永久欠番) ―獅子王―
 2、クリスティアン=ローゼンクロイツ  ―閃光の薔薇― 後に空席
 3、サージル=エールリンド=ハルトマン ―黒い悪魔―
 4、ルシファード=ヴィ=カリゲラ    ―ガルス帝国の吸血鬼―
 5、モニカ=マリアンヌ=クリスティアーネ ―精霊の支配者―
 6、空席      後にバルドロイ=ル=ソレイユ 
 7、シルフィリア=アーティカルタ=フェルトマリア ―白麗なる騎士姫―
 8、ラン=リーファ(蘭麗華) ―黒猫―
 9、空席      後にチャン・リンシー(星凛黎)
 10、アリエス=ド=フィンハオラン ―剣聖―
 11、ユーフェミア=ティリア=ユーウェイン ―悠久の姫巫女―
 12、空席      元 リア(デオン)=ド=ボーモン 後にデヴィット=シュワンヘルト 
 13、ユダ(永久空席)

 ってな感じ。― ―内は二つ名です。
 まあ・・・どの人物も一癖も二癖もある人物です。おまけに、みんな表の顔がすごくって・・・
 
 でも、きっと最強はジュリオです。間違いありません。

 ともあれ、長々とお付き合いくださりありがとうございました。

 こんな長くて下らない話に付き合って下さったこと、心よりお礼申し上げます。

 では、またの機会があればお会いしましょう。

 それでは、また。



――――管理人からのコメント
まずは完結、おめでとうございます!
それにしても本当、長かったですね。やることてんこ盛りって感じでしたし。
いやはや、それにしてもリアには本当に騙されました(笑)。

さて、カノン・シティのことやらなんやらと、色々と伏線を張っていただいたのですが、正直、本編中で使えるかどうか、かなり難しいところだったりします。
なんというか、あちこちに矛盾点がありまして……。
まあ、できる限り元のストーリーを修正して、リンクさせていきたいところではあるのですが、それでもなお本編で矛盾がありました場合は、『そういうもの』と割り切っていただけると助かります。

や、僕なりにこの矛盾点を解消しろと言われれば、できなくはないのかもしれませんが、シルフィリアたちとファルカス&サーラ(ファルカス組)、そしてミーティア&アスロック(ミーティア組)との関わり方があまりにも複雑になってきてしまっているので、正直、かなり難しいところだったり……。
ともあれ、『水の都の小夜曲(セレナーデ)』の連載、お疲れ様でした。
次は『リ・スペリオル』の第一作でお会いできることを祈りつつ。

……あ、その前に『ラヌーバ』ですよね(笑)。こちらも楽しみにしております。
それでは。



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